色々

色々書きます

『QK部 -1213-』完結しました。

カクヨム」で2017年から連載していた小説『QK部 -1213-』が、この度ついに完結いたしました。

kakuyomu.jp

 

パタリと更新しなくなった時期があったり、終盤にかけて更新頻度が落ちたりしつつも書き進めてきましたが、ついに終わりを迎えてしまいました。

 

悲しい!!

 

連載が終わって一番悲しんでいるのはたぶん作者たる私です。なにしろ6年間ずっと頭の中にあったものが終わってしまったのですから!!

最終話の投稿ボタンを押すのに1時間くらいかかりました。マジで。

 

本作は6年も連載していたうえ、2020年には書籍化もしたため、個人的にかなり思い入れの強い作品となりました(続編の出版はまだだろうか……)。

また本作はヒューマンドラマ物として書き始めたのですが、当時はヒューマンドラマを書いたことがなく、試行錯誤しながら構成を作りました。

その当時の思考をまとめたものをニコニコ動画の「ブロマガ」に投稿していたのですが、ブロマガのサービスが終了してしまったため現在閲覧することができません。記事自体は保存してあるので、noteで公開しようと思えばできますが……やるかなぁ。

 

また、私は長編小説もほとんど書いたことがありませんでした。『QK部』がほぼ初めてだったのです。その総文字数は51万7324文字! 字数で言えば、間違いなく私史上最も長い話となりました。

当初はこれほど長い話にするつもりは全くなく、いま読み返すと色々と反省点の多い作品でもあります。

そんなわけでこの記事では、『QK部』への思い入れを語りつつ、反省点をかき集めようと思います。コアなファン向けの記事になります。

あ、めっちゃネタバレするので気をつけてください。

 

 

何をしたかった作品なのか

最初に、とりあえずこれだけ書いておこうと思います。本作の目的ですが、素数大富豪の啓蒙のため……というわけでもなく。

『QK部』を書くずっと前から、一度「部活もの」を書いてみたいなぁという思いがありました。しかし、私自身はあまり部活をやったことがないし、スポーツも詳しくありません。では自分が好きな数学や物理をやる部活にしてはどうかと思いつつも、そこには『数学ガール』などの先人がいてハードルが高い。

どうしたものか……と考えていたときに、目についたのが素数大富豪だったのです。

当時の私は、素数大富豪の全国大会でベスト4に入る強豪でした。しかも、素数大富豪の猛者たちがこぞって素数大富豪のノウハウをブログにまとめていた時期でもありました。

つまり当時、私は素数大富豪にかなり詳しく、さらに日々新情報を手に入れられる環境にあったのです。その上、私には小説を書く趣味があった。そう、私は、素数大富豪で部活ものを書ける、世界で唯一の存在と言っても過言ではなかったのです。これは書かないわけにはいかない。そう思って、構成を組み立て始めたのでした。

 

一口に「部活もの」と言っても、大きく3パターンあります。

一つ目は、熱血もの。スポーツ系や音楽系に多いですが、とにかく練習や試合を熱く! 興奮するように! 描く作品です。部活ものの金字塔『スラムダンク』はここに属するでしょう。ただ私は、そういうのを読むのは好きでも自分で書くのは難しいかなぁと思ってやめました。

二つ目は、日常もの。文化系や音楽系に多い作品で、その部活での日常をゆるく描く作品です。有名どころだと『けいおん!』とか『ゆるキャン』とかでしょうか。これはこれで好きですが、できれば「大会を描きたい」という思いがあったため、日常ものとは相性が悪いかなと感じてやめました。

ということで、必然的に三つ目を選ぶことになりました。三つ目は、ヒューマンドラマです。部活動を通じて、登場人物たちの心情や成長を描く物語です。『響け!ユーフォニアム』などが該当するでしょうか。

当時の私はまともにヒューマンドラマなんて書いたことがありませんでしたが、消去法でこれしかありません。これで行くしかないのです。

仕方がないので、この方向性でお話を考えてみることにしました。まさかそれが6年も続くことになろうとは、そしてそれが書籍化までしようとは、このときはつゆほども思いませんでした。

 

タイトルと各話タイトルについて

と、そんな感じで書き始めたのが本作『QK部 -1213-』です。

ちなみに、連載開始当初の名前は『QK -1213-』でした。すべて全角ですが、特に全角・半角のこだわりはありませんので好きに書いてください。

名前が変わったのは、書籍化がきっかけです。このタイトルだと内容が分かりにくいため、「部活ものだとわかりやすいように」という担当さんの指示で、「部」をつけました。今思うと、確かにこっちの方がわかりやすくていいですね。

 

タイトルの「QK」は、作中での素数大富豪の呼び方です。現実でこのように呼んでいる人は見たことありませんが、私が勝手に名づけました。

なぜそうしたかというと、「素数大富豪」だと漢字が五文字も続いてなんとなく硬そうに見えたからですね。ポップで親しみやすい愛称をつけたいと思って、「QK」と名づけました。なお、作中で「素数大富豪」の名が存在しないわけではありません。「正式名称は素数大富豪だが、みんなQKと呼んでる」という設定になっております。

 

タイトルといえば、各話タイトルは本作の特徴の一つですね。すべて数字または数式に統一しました。なんかかっこいいので。

ただ、そのせいで毎回タイトルを考えるのにめちゃくちゃ苦労しました。数字だけで内容を説明するのは無理なんよ。

おまけに、内容を読まないとタイトルの意味がわからない作品になってしまいました。サブタイだけ見ても話の流れがわかった方が読みやすいと思うので、ここは反省点ですね(それを見越して、各章の名前は普通の日本語にしたのですが)。

最終話のタイトルだけ「QK」としましたが、これは最初から決まっていたわけではなく、最終話を書き終わってから複数あるタイトル候補の中から「えいやっ」と決めました。これでよかったんやろうか。

他の候補としては、「+1(1年進級するのと、一歩前に進んだ的な。しかし過去話ですでに使っていたので没)」とか、「1213(第1話と同じタイトルを最終話につけるのオシャレと思ったものの、オシャレさで言うなら作品タイトルの方がオシャレだと思って没)」とかがありました。

 

登場人物で振り返るストーリー

さてここからは、ストーリーと登場人物について語ります。本作はヒューマンドラマですので、登場人物について語ることが、そのままストーリーについて語ることになります。ということで、メインを張った登場人物と、私の思い入れが強い登場人物たちについて語ります。

古井丸みぞれ

本作の主人公。謎にロリ巨乳設定にしましたが、作中で巨乳成分が活かされたことはほぼありませんでした。終盤では作者自身、その設定を忘れてたくらいですし。

書籍化の際は、児童向けにすることもあって、胸は完全に削られました(ただしよく読むと、みぞれが巨乳であることがわかる描写が1箇所だけある)。書籍で巨乳設定がなくなったことで、Web連載の方でもその辺りから巨乳いじりがなくなりますね。なくして正解でした。

 

作中では、1213にやたら縁がある子として登場しました。誕生日は12月13日、住所は12丁目13番地、出席番号は1年2組13番……などなど。

これについて、書籍化のときに校正さんから「日本で12丁目13番地があるのは、北海道を除くと千葉県我孫子市などごくわずかですが、大丈夫ですか?」との指摘が入りました。「校正さんってそんなことまで調べるの!?」と大変驚いたエピソードです。

『QK部』の舞台が千葉県なのはそのことを見越しての設定……ではなく、私が千葉県在住だからそうなりました。一応、執筆前に12丁目13番地が実在するか調べたので、千葉県にあるらしいことは知っていました。

よって、みぞれの家の住所は日本に実在するため、そこが聖地と言えなくもないことになります。ただ、そこにあるのはごく普通の民家のため、もし『QK部』が大ヒットして、ファンが大挙して訪れたりしてたら大変なことになるところでした。

 

みぞれの名前には元ネタがあります。

元ネタは、素数5101です。510を「古井丸」と読み、1を「みぞれ」と読んでいます。「なんで1がみぞれ??」と思うかもしれませんが、「みぞれ」は漢字で「霙」、つまり「雨冠にA」と書くからですね。

執筆前に作ったキャラ設定表では、みぞれの癖として「ノートの隅にアルファベットのAを模したキャラクターを落書きしている」と書いてあったりします。作中では一回も登場しませんでしたが、私の頭の中ではそういうことをする子でした。

なぜ5101を元ネタにしたかというと……これは特に理由はありません。素数一覧を見て、いろんな素数の語呂合わせをどんどん考えていって、一番しっくりきたものを選びました。

当然、最初から「1をみぞれと読む」なんてテクニカルなことを思いついたはずもなく、最初に考えていた名前は「古井丸はじめ」とかでした。この「はじめ」と言う名は、別のキャラに受け渡されることになります。

 

ちなみに私は、「一般名詞の名前」が好きだったりします。「茜」とか「しずく」とか。なので自作長編小説の主人公の名前も、せっかくなら一般名詞にしようと思いました。

それと同時に、「なぜこの子の親は、子供に『みぞれ』なんて名付けたのか?」ということも考えていました。一般名詞の名前が好きなので、子供に敢えて一般名詞を付ける理由は日頃から考察していたわけです。

みぞれの親が「みぞれ」と名付けた理由は、「名付けに意味を持たせたくなかったから」でした。自分の生き方は自分で決めて欲しいという願いだったわけですね。しかしこれが終盤、みぞれを悩ませます。なぜ自分で決めなきゃいけないのか、人真似ではいけないのか、と悩んでしまうのです。

みぞれの名付けの理由は、作中で伏線のひとつとして張っていました。合宿編で、みんなが自分の名前の由来を話す流れになったとき、みぞれは答えをはぐらかします。そして、進路編の終盤で名前の由来を明かします。

……ただ、ここをそんなに引っ張る必要はあったのかな、と思っています。合宿編で明かして、進路編でもう一度言及した方が、読者の覚えもよかったんじゃないかと思います。反省点ですね。

 

名前にはもう一つ元ネタがあります。トランプのハートです。ハート=恋=古井(丸)というわけですね。

本作のメインキャラ4人の名前は、全員このように、素数&トランプのスートの組み合わせで作られています。

みぞれはそれに加えて、「出席番号が13番くらいになりそうな名前」という制限もありました。「こいまる」なら13番になるんじゃないかなぁ。でもよく考えたらクラスが30人程度なので、ア行~カ行に名前が集中しすぎな気もしますね。

ちなみにQK部員はカ行で始まる名前が多いのですが(古井丸、倉藤、剣持)、これは完全に偶然です。第2章のラストくらいで気が付きました。

 

名前に元ネタがあるなら、キャラクター設定にも元ネタがあります。

当時ハマっていた漫画『ハナヤマタ』の主人公「関谷なる」です。完璧超人な友人に憧れていて、自分もそんな風になりたいと思いつつ、今一歩踏み出せずにいる……といったようなキャラです。まぁ、部活ものの主人公って大体こういう性格をしてる場合が多いですが。

 

みぞれは、そんなうじうじした女の子として登場しますが、実は密かに内なる炎を燃えたぎらせています。それが明かされるのは、第1章のラスト。本作は、みぞれがその内なる炎と向き合い、自分を満足させる方法を見つけるまでのお話でした。

 

ところで本作にはメインとなる登場人物が四人いますが、その誰の視点に立っても、その人物が主人公となるように書かれています。

みぞれから見たこのお話は、憧れの友人に追いつきたいという欲に向き合い、自分が本当は何を望んでいるのかを見つめ直し、ついにその望みを叶える……というお話になっています。

第8章(二学期編)のラストで、みぞれは友人の持つ「自信=自分を正しいと思える心」が欲しいのだと気づき、第9章(進路編)のラストで、数学の道へ進むことでそれを手に入れる決意をします。

この流れは、第1章(入部編)を書き終えた時点で既に決まっていました。数学へ進むきっかけとなる問題を「6つ子素数は存在するか?」という問題にすることも決まっていました。なぜこの問題かというと、「素数大富豪に関連した数学の問題で、数学を全然知らないみぞれが解けそうなレベルの問題」だと思ったからです。

実は第3章(練習試合編)や第7章(全国大会編)などで、みぞれがこの問題に触れているシーンがあります。そのときには、みぞれは気になりつつもスルーしていますが、過去に何度か触れることで深層心理でこの問題についてなんとなく考えており、第9章のラストでブレイクスルーが起こった……のかもしれません。

 

みぞれは16歳の誕生日の朝、目を覚ましたときに数学への道を志しますが、実はこの展開にも元ネタがあります。実在する数学者ガウスが、まさにこのような理由で数学者を志したと伝えられているのです。もっとも、ガウスが解いたのは「正十七角形は定規とコンパスのみで作図可能である」という、もっと高度な問題でしたが。

なお、ガウスの誕生日は1777年4月30日、数学者を志したのは1796年3月30日なので、19歳になる1か月ほど前にこのエピソードがあったようです。

みぞれがこのまま数学の道へ進めば、いずれガウスに出会うでしょう。そしてもしかしたら、このエピソードも知るかもしれません。みぞれのことですから、そのときはきっと、少し嬉しくなるでしょうね。

 

宝崎伊緒菜

本作の第二主人公にしてラスボス的存在。私の好きな属性をふんだんに盛り込んだ子です。

赤フレームの眼鏡、ツーサイドアップ、参謀タイプ、頭脳ゲーム好き、「〜だわ」口調、などなどなど。4人の中の唯一の上級生であることからお姉さんっぽいキャラにしましたが、そこも好きですね。やや男勝りでありながら、胸がそれなりにあるのもいい塩梅です。

私の書く作品は高確率でこういう女の子が出てきますが、それは私がこういう子を好きだからです。間違いなく本作で一番好きなキャラです。『QK部』を書き終えて何が一番悲しいって、もう伊緒菜を書けないことですね。ああ、これが今生の別れだなんて……!!

書籍化の際、各キャラのラフをイラストレーターさんからいただいたときは、伊緒菜だけ描き直してもらいました。髪のボリュームをちょっとだけ増やしてもらったのです。おかげで理想的なツーサイドアップが得られました。まじで何度見ても可愛いのでぜひみなさん何度も見てください。

 

髪型はもちろん、ニヤッとした感じの口元もいい雰囲気出してますね。私からは指定しなかったのですが、髪留めがダイヤの意匠なのも凝っています。後で書きますが伊緒菜の名前の由来はトランプのダイヤなので。

ちなみに書籍『QK部』の表紙では、みぞれはハートの髪留めをつけています。私からは指定しなかったのですが、イラストレーターさんが意図を汲んでくださいました。プロってすごい……!

ちなみに上の写真は、書籍化の際にKADOKAWAさんが作成したポップです。なんと主人公のみぞれを差し置いて伊緒菜が前面に出ています。やっぱり一番可愛いからかな。(本当の理由は「作中でこのセリフを言うキャラが伊緒菜だから」ですが)

 

伊緒菜の名前の由来は、素数107です。この素数は第2話のタイトルにもなっていますね。みぞれが107を出して津々実に勝つからですが、伊緒菜の名前ともかけていました。

トランプのスートは、ダイヤ。ダイヤ=宝=宝崎というわけです。ちなみに「宝崎(ほうざき)」は、日本に実在する苗字……のつもりだったのですが、後で知り合いから「調べたけどあんな苗字は存在しない」と言われました。どっちなんでしょうね。全国の宝崎さん、いたらご連絡ください。

伊緒菜の妹の伊佐緒(いさお)の由来は、1300です。え、素数じゃない? 素数じゃないですが、四つ子素数の“親“です。だから何ってわけでもないですが。

 

キャラクターとしての伊緒菜の元ネタは、こちらも当時ハマっていた漫画『うらら迷路帖』の雪見小梅です。だいぶ改変したのであんまり元ネタは残ってないですが、頭の回転が速いことと、「普段はみんなのまとめ役なのに、特定の相手の前でだけ妹キャラになる」という点が色濃く残っています。

伊緒菜の元ネタはもう一人いて、私が中学~大学時代に書いていた連作短編小説の登場人物です。その子は「真実(まさみ)」という名前で、理系だったので、私は伊緒菜のことを「文系の真実」と呼んでいました。

 

伊緒菜から見たこのお話は、ずばり、宿命のライバルを倒すお話です。私は「少年漫画ルート」と呼んでいました。

伊緒菜がライバルである「お姉ちゃん」こと肇さんを倒すのは、全国大会のラストです。この構想は当初からあり、ある意味で地区予選編・全国大会編は伊緒菜のメインストーリーと呼べなくもないです(合宿編あたりから、伊緒菜が主人公っぽくなってますね)。

ライバルを倒したあと、伊緒菜は満足感に浸ります。そして彼女の話はここで終わり……と思いきや、最後の最後でみぞれという新たなライバルが誕生したところで幕を閉じます。

この展開も執筆前から構想していたのですが、当初の予定ではみぞれが伊緒菜を倒すのは2年目の全国大会決勝戦の予定でした。

そうです、『QK部』は1年間の話として決着しましたが、元々は2年間の話として書く予定だったのです! ただ、全国大会編を書くのがあまりにきつかったので、1年で止めることにしました。
(元々、ストーリーをしっかり練っていたのは1年目までで、1年目を書いてる途中に2年目のアイディアが浮かべば続けよう、というくらいのつもりでした)

当初の予定では、試合内容をしっかり描くのは練習試合編までで、それ以降の試合はすべてダイジェストで送るつもりでした。それをひとつひとつ丁寧に描いてしまったのは……なんか書くのが楽しくなっちゃったからです。

しかし楽しかったのは最初だけでした。試合内容をひとつひとつ考えるのはめちゃくちゃ大変で、ぶっちゃけ苦痛で、これが更新停滞の主要因ともなってしまいました。ここは反省点です。2年目をダイジェストでお送りすることも考えたのですが、うまくいく気がしなかったので止めました。

 

正直、あの試合内容をやたら詳細に描写する書き方は、小説としてどうだったのでしょう? あそこまで細かく書かなくても、素数大富豪を面白く描くことはいくらでもできたはずです。有名な話ですが、『ヒカルの碁』には囲碁描写がほとんどないそうです(私は読んだことないので知りませんが)。にもかかわらず、その後囲碁ブームを起こしました。そのような描き方もできたはずです。

ここはかなり大きな反省点です。精進します。

 

ちなみに、伊緒菜がみぞれに負ける展開に特異性を持たせるため、物語全体にある仕掛けを施していました。実は、「お姉ちゃん」との戦いを除き、伊緒菜が負けるシーンはここ以外に存在しません。団体戦でも個人戦でも、QK以外のどんな勝負でも、伊緒菜は常に勝っています。唯一の例外は文化祭のランキングですね。

本当は作中でそれを強調しておいた方がラストがより光ったのですが、うまい強調のさせ方が分からず、こうして「実は」と紹介するはめになりました。反省点です。

 

ところで、伊緒菜の誕生日は9月11日です。二学期編で体育祭の準備を進めていたあたりで誕生日を迎えています。第80話の前後ですね。

当初は8月11日、つまり全国大会の日を誕生日にして、それと絡めて大会中になにか起こそうかと思っていたのですが……あまり良いアイディアが浮かばなかったので没にしました。

1年目で伊緒菜に「お姉ちゃんに勝つのが最高のプレゼント」みたいなこと言わせて、2年目でみぞれに「伊緒菜先輩より強いプレイヤーが、わたしからのプレゼントです」と言わせて伊緒菜に勝たせる、みたいな展開を考えてはいました。

が、あまり面白くないかな、と思って没にし、誕生日もずらしました。やってもよかったかなぁ。

 

剣持慧

本作の第三主人公にして作中で最も成長した子。ある意味一番の主人公だったかもしれません。

見た目は清楚なお嬢様っぽい感じにしました。黒髪ロングのハーフアップで、物静かな感じです。もっとも慧ちゃんの場合、物静かっていうより、他人と距離を取っているだけなのですが(序盤は)。

「他人と距離がある」という設定が、微妙にみぞれと被ってしまい、ちょっと動かしにくいときがありました。反省点ですね。たった四人しかいないのになんでキャラ被りするんだ。

ちなみに私はハーフアップも好きです。ハーフアップに女袴なんて最高です。残念ながら慧ちゃんが袴を履くシーンはありませんでしたが、文化祭あたりで無理やり入れてもよかったかもしれません。

誕生日は10月13日。文化祭の少し前なので、作中で触れる機会もあるかなと思ったのですが、あまり良いエピソードが思いつかず言及しませんでした。残念。

 

本作は部活ものですので、部活ものの定番である「部員が足りないから才能ありそうな人を勧誘するも、なぜかハチャメチャに拒否られる」という展開をやることにしました。そのためのキャラ設定として、慧ちゃんには「数学が好きだけど、それを隠している」という子になってもらいました。

まさか、そんな風に軽く決めた設定が、『QK部』の主軸ともいえるレベルで大きな話に発展するとは、当初は思っていませんでした。

とはいえ、設定を決めた段階で、慧ちゃんのエピソードも終わりまで考えていました。最終的には親と決別して一人暮らしを始める決意をしましたが、ここまで考えてから書き始めていました。その時点で長く重い話になると気付いてもよさそうなものですが、それに気付くには経験値が足りなかった。

ところで、知り合いの女性数人に本作の感想を聞いたところ、全員口をそろえて「慧ちゃんが好き」と言っていました。意図していなかったのですが、考えてみると確かに女性人気の高そうなキャラになったかもしれません。逆に男性人気が高いのは誰なんでしょうね。やっぱ伊緒菜かな。

 

慧ちゃんの名前の由来は、素数13、すなわちトランプのキング(K)です。この四人の名前はみぞれ→津々実→伊緒菜→慧の順で考えたので、「他三人に比べてちょっとひねった命名にしよう」と思って数字の語呂合わせを避けました。素数大富豪っぽい命名ができて良かったと思います。

トランプのスートは、スペード。スペード=剣=剣持です。序盤の慧ちゃんは性格がツンツンしていて、剣みたいに鋭かったので、そのイメージを重ねていました。もちろん、徐々に丸くなっていく予定ではあったのですが、序盤のイメージって大事だし。

キャラクターとしての元ネタは、『うらら迷路帖』の巽紺です。こちらもハーフアップで、大きなリボンが狐の耳みたいに見える、袴を着た女の子です。めっちゃ可愛いです。

こちらもキャラ改変しまくっているので元ネタはほとんど残っていないのですが、勉強が得意なところとか、ちょっと頭が硬いところなんかは残っています。

 

さて、慧ちゃんから見たこのお話ですが、長いですね。下手するとみぞれよりもメイン回が多いんじゃないでしょうか。たとえば第5章の中間テスト編は1章まるまる慧ちゃん回ですが、まるまるみぞれ回の章は存在しません。主人公とは。

数学が好きな慧ちゃんですが、「女の子が数学を好きなんて」と気持ち悪がられた経験から、そのことをひた隠しにしています。ただ隠し方が下手で、たまにボロが出ます。みぞれにそのボロを見つかり、QK部に誘われる……というのが序盤の展開。

QK部に入ったあとも、慧ちゃんは数学好きを公言するのを躊躇います。しかし、みぞれや伊緒菜、そしてクラスメイト達にありのままの自分を認められるうちに、次第に数学好きを表に出すようになります。やがて全国大会で知り合った他校の数学部の人達とも仲良くなり、ますます自分に自信を持つように。

が、慧ちゃんのトラウマの原因となった母親との確執は全く埋まらず、ついに大喧嘩に発展します。

母親も母親で、トラウマを抱えた人間でした。そのことを、慧ちゃんは作中では最後まで知らずじまいなのですが……とにかく、夫(慧ちゃんの父親)の説得によりそのトラウマを克服し、慧ちゃんの進路を認めます。

明らかに他のメンバーより長い。一言でまとめられない。

頑張ってまとめると、数学が好きなことを隠していた女の子が、それを打ち明けるようになり、トラウマの原因であった母親を乗り越えて数学の道へ進む決意をする話、といったところでしょうか。

最終的に、慧ちゃんの母親を説得する最後の決め手は、父親の説得になってしまいました。本当は慧ちゃん自身に説得させたかったのですが、二人の関係性を考えるとそれは不可能だろうと判断しました。

 

ところで、慧ちゃんとみぞれの変化の仕方は、意図的に対照的にしている部分があります。

それは、友人の存在です。

慧ちゃんもみぞれも、序盤ではあまり友達が多くありません。それが、慧ちゃんは話が進むごとに性格がどんどん丸くなり、友達も増えていきます。

一方で、みぞれは性格もさほど変わらず、最後までつーちゃんの隣にいることを選び、つーちゃん以外に友達と呼べる存在は伊緒菜と慧ちゃんくらいに留まっています。

これはある種のアンチテーゼとしてこのようにしました。この手の学園ものやヒューマンドラマでは、序盤に友達の少ないキャラは、終盤では友達が増えがちです。そして、それによりハッピーエンドを迎えます。「友達が多いのは良いこと」として描かれているわけです。

しかし、個人的には、そうは思いません。友達が多い方が良いのは、友達をたくさん欲しいと思っている人です。そう思っていない人には、多くても少なくても問題ないでしょう。

慧ちゃんは、友達が欲しいと思っていました。数学の話をしたいと思っていたからです。逆にみぞれは、そうは思っていませんでした。つーちゃんさえいれば良いからです。だから、このような話になりました。

といっても、みぞれも別に人間嫌いとかそういうわけではなく、むしろ大好きなのです。大好きだからこそあまり友達を増やせないのです。人を愛するにはエネルギーが必要であり、みぞれは少人数を愛するので精一杯なのですね。

最終的に、みぞれとつーちゃんのラブラブエンドに落ち着けたので、良い采配だったと思います。

 

その一方で、慧ちゃんは母親とは別れて暮らす決意をしました。これもまた、アンチテーゼの一種です。たいていこの手の話では、母親と和解して解決しそうな気がします。

しかし世の中、分かりあえない相手はいます。それがたとえ肉親であっても。そういう相手とは、別れるよりほかない場合も、多々あります。

高校生にして母親と別れる決断をするのは、並大抵のことではないでしょう。慧ちゃんにそれができたのは、背中を押してくれる友人がたくさんいたからです。受け止めてくれると信じられる友人がたくさんいたからです。

母親1人と別れるためには、友人は1人では足りないだろう……そう思って慧ちゃんの友人を増やしたという面もあります。

 

倉藤津々実

本作の第四主人公にして百合パート担当者。正直もっと活躍させたかった。

本作の構想の軸となっているのは、「『まんがタイムきらら』で素数大富豪をやる」という発想です。

まんがタイムきらら」といえば、『ご注文はうさぎですか?』や『きんいろモザイク』『ぼっち・ざ・ろっく!』『まちカドまぞく』『スローループ』『ゆゆ式』などなど……いわゆる百合作品を多数生み出した雑誌です。

そうです、私は本作で、百合をやろうとしていたのです! そしてみぞれの相手として、つーちゃんを登場させました。

結果的にラブラブエンドに落ち着いたのでまぁよかったかなと思いますが、もっとイチャイチャシーンを増やしてもよかったなと思っています。

みぞれとつーちゃんがカップリングなので、当然、当初の予定では伊緒菜と慧ちゃんもカップリング予定でした。が、伊緒菜がお姉ちゃんばかり見て、慧ちゃんが数学ばかり見ていたので、うまく行きませんでした。この子ら我が強すぎる。

 

名前の由来は、素数223。素数大富豪でも使いやすい素数で、私もよく出します。「みぞれだけあだ名で呼ぶ」という設定にしたかったので、あだ名をつけやすそうな素数を探しました。ちなみに、私自身も、頭の中では津々実のことを「つーちゃん」呼びしてます。だからこの記事でもつーちゃん呼びで通してます。

最初は、この子だけQK部の幽霊部員ポジションになるので、素数のようで素数でない57に由来する名付けを考えていました。が、思いつかなかったので諦めました。代わりに、誕生日は5月7日にしましたね。

津々実の弟の七海の由来は、素数773です。こっちも覚えやすい素数ですが、素数大富豪だとちょっと使いにくいです。奇数ばかり消費するので。

トランプのスートは、クラブ(クローバー)。クラブ=くらふ=倉藤というわけです。

キャラクターの元ネタは、みぞれと同じく『ハナヤマタ』の登場人物、笹目ヤヤです。主人公が憧れる完璧超人な友人ポジで、主人公にぞっこんの女の子です。まさにつーちゃんですね。

 

先述の通り、みぞれのカップリング相手であると同時に、みぞれの目標となる人物でもありました。そういう立ち位置のため、作中での成長はほとんどありませんでした。みぞれの目標がぶれてしまうと困るので。

しかし、本人が変化せずとも、みぞれからの見え方は変化しました。この展開は、初期から考えていたものです。思っていたほどうまく決まらなかったので、ここは反省点です。作中では津々実が直接みぞれにそのことを説明してしまいましたが、本当はみぞれが自ら気付いて欲しかったのです。私の技術が足りませんでした。

でもどうすれば気付けたのでしょう。津々実が努力してるところを目撃させるとか? 安直すぎて、何か違うなぁ……。

 

みぞれはつーちゃんのことを完璧超人だと思っていましたが、実際にはそんなことはありませんでした。努力したり、奔走したり、人を頼りまくったりしています。みぞれにはそれが見えていなかっただけなのです。

しかしそれは逆もまたしかり。津々実の方からも、みぞれの本性は見えていませんでした。か弱くて、守ってあげなきゃいけない子だと思い込んでいたのです。

ずっとそばにいて、お互いに相手を大切な存在だと思っていたのに、お互いにお互いのことが全然見えていませんでした。みぞれの成長を見守るうちに、津々実はそのことに気付かされます。

自分のあとをよちよちと追ってくるだけの存在だと思っていたみぞれが、実は内なる炎を燃え滾らせ、虎視眈々と自分を狙っている猛獣だと気付いたのです。そしていつか追いつかれてしまいそうだと思い、追いつかれないように走っていたつもりが……気付くととっくに追い越されてしました。

でも、まだ間に合う。そう感じた津々実が、みぞれと同じものを目指し、同じラインに立ったところで、『QK部』は終わります。

これが、つーちゃんから見たこのお話です。大切な親友の本性を知り、追い抜かれないように努力し、互いに相手を深く知ったあとで隣に立つ。良い感じの百合ものに仕上がったんじゃないでしょうか。

 

と言いつつ、あのラストは、ギリギリまで思いついていませんでした。ラストシーンをどうするかは、第1章を書いているときからずっと悩み続け、なんなら最終章を書き始めてもまだ悩んでいて、書き終わった今でもあれでよかったのか悩んでいるレベルです。

なにぶん、長い話になりましたからね。どうしたってラストにはこだわってしまいます。本当にあれでよかったのか……。

 

長いと言えば、当初の予定ではこんなに長い話にするつもりはありませんでした。大会の試合はすべてダイジェストにする予定でしたし。

と言っても、当初考えていたストーリーに、何か付け足したわけではありません。本作の内容はほとんどが執筆前に組み上がっており、その通りに書き上がりました。むしろ2年間の話の予定を1年間の話にしたので、半分に減っているくらいです。

要は、長編小説というものを書きなれていなかったため、「このくらいのストーリーだとこのくらいの長さになる」というイメージが全く掴めていなかったのですね。まさかこんなに長々と書かないと書ききれないとは思わなかった。反省点です。

 

ちなみに、一番初めに「素数大富豪の小説を書こう」と思ったときに考えたストーリーは、全5話くらいの短いものでした。そのときは、部活ものにありがちな「生徒会vs廃部寸前のQK部」みたいな構図で、廃部を乗り越えて大団円を迎える予定でした。

そして、慧ちゃんは生徒会側の人間で、数学好きを隠しており、でもそれを伊緒菜に見抜かれてQK部に引き抜かれて廃部を免れる……みたいな展開を考えていました。

そこから大幅に構想を変えて本作はできあがりました。変えて良かったと思います。

 

遠海美沙/遠海美衣

萌葱高校のライバル校、柳高校QK部の1年生たちです。名脇役として活躍してくれました。とても書きやすかったです。

悪戯が好きで算盤が得意な双子の姉妹です。その算盤力で、数桁の素数同士のかけ算を瞬時に暗算してしまい、みぞれ達を苦しめました。

書籍版では、美沙が第3章の扉ページも飾ってます。よく漫画とかである「計算の得意なキャラが思考してる時に背景に数式が流れる」って演出の算盤版が描かれています。めちゃカッコいいです。

 

姉が美沙、妹が美衣。見た目はそっくりで、違いは髪型のみ。姉が向かって右側にサイドテールを垂らし、妹が向かって左側にサイドテールを垂らしています。……合ってるかな? 作者も時々不安になって、設定資料を見返しながら描写してました。

なぜ姉が右側かというと、それは名前の元ネタに由来します。二人の名前は、双子素数の10333と10331から取っています。数直線上で並べると10333の方が右側に来るので、右にサイドテールを垂らすことにしました。覚えやすいですね。

ちなみに、10333と10331は双子素数ですが、10337も素数なので、実は三つ子素数なのです。なので、実はこの二人にはさらにミナという姉が……という設定は特にありません。知り合いに指摘されるまで、私はこのことに気付いていませんでした。

 

もうひとつ気付いていなかったこととして、この二人は、『アイドルマスター』に登場する双子、双海亜美双海真美に見た目も性格も酷似しています。なんとサイドテールの向きまで一緒。なんなら漢字も半分同じです。

マジで全く気付いていませんでした。設定を考えていたときは双海亜美/真美のことは知りませんでしたので、本当に偶然の一致です。サイドテールの長さだけが唯一の違いです。

まぁ、「知らなかった」と言っても、「なんとなく見たことはある」程度には知っていたので、ぼんやりと意識していたのかもしれません。

というか、フィクションに出てくる幼い双子って、双子の特性を活かした悪戯好きであることが多いですからね。『ひぐらしのなく頃に』の園崎姉妹とか。そういうコテコテの(テンプレの)キャラをイメージして作ったキャラです。

そもそもなぜこの二人が双子になったかと言えば、
「部活ものといえばライバル校。しかしいきなりライバル校で何人もキャラが一度に出ると、読者が覚えにくいだろう。……そうだ! 双子キャラを出せば記憶コスト1人分で2人出せるぞ!」
という安易な考えが理由です。部活ものでライバル校に双子がいるお話は、全部同じ理由でそうなったと思っています(偏見)。

当初はそんなつもりなかったのですが、全国大会編の途中で「意外性を持たせるためにめっちゃ泣かせよう」と思いついた途端、良いキャラに変わったと思います(この思い付きは、遠海姉妹ファンの知り合いの感想が元になってたりします。ありがとうございます!!)。最終的には、史先輩と良い感じの絆も芽生えました。

 

吉井史

ライバル校の部長。初めは双子のおまけポジションのつもりで書いていたのですが、気が付いたら王道の部活ものストーリーを歩んでいましたね。ある意味主人公だったのかもしれません。

名前の由来は、作中で本人がネタにしていた通り、素数の44123。地区予選編ではこの名を捨てることが、彼女の成長の象徴にもなりました。

名を捨てると言えば、書籍化に当たって男性化を強いられた子でもあります。そして吉井衣玖(よしいいく)という名になりました。これは担当さんからの指示で、読者層の幅を増やすために男キャラを出したかったそうです。

しかし、名前の語呂合わせで44123にこだわるというキャラ付けをしてしまっていたため、名前を変えるのに一苦労しました。試合内容もまるまる1から考え直しましたし。頑張って44119という、元と比較的近い数に修正することができました。

もし書籍版の続編が出るなら、地区予選編・全国大会編ではもっと男キャラが増えるのでしょう。烏羽高校の部長・副部長コンビなんて、男性化候補の筆頭な気がします。

双子からは頼りない先輩と見なされていましたが、大会で号泣する双子を見て感化され、徐々に頼りがいのある先輩へと成長していきました。最終的にはあっさりと負けてしまいますが、双子との絆ができてハッピーエンドを迎えることになります。

……同じストーリーを男キャラでやると意味合いが変わってきてしまいそうな気がするんですけど大丈夫ですかね。3人で仲良くソファに並んでるシーンとか、抱き合ってるシーンとかあるんですけど。

 

最終話の1話前、第100.5話で、史先輩は柳高校を卒業します。その際、遠海姉妹の「入れ替わり」を見抜き、双子が本当の感情を爆発させました。

この展開は、地区予選編を書いているあたりから既に考えていたものでした。その伏線として、遠海姉妹が「史先輩の前でたまに入れ替わってるが、気付かれていない」という旨の発言しています。伏線回収まで時間がかかりましたが、書けてよかったです。

 

馬場肇

伊緒菜にとってのラスボスであり、作品全体における中ボス的存在。伊緒菜の「お姉ちゃん」で、伊緒菜が素数大富豪を始めるきっかけとなった人物です。

伊緒菜から見れば、遠くの地にいるライバルであり、彼女と会うために全国大会の決勝へまで勝ち進むという、王道的少年漫画ストーリーの片棒を担ぐ人物です。

よく、腐女子が「少年漫画の主人公×ラスボス」というカップリング(あるいはこの逆カプ)を組んでいますが、まさにそれです。正直、私は腐女子がそういうカップリングを組む理由が分かっていなかったのですが、本作を書き始めて理解しました。常に相手のことを想っているんですから、これはもうカップルです。間違いない。

名前の由来は、1。素数ではないですが、合成数でもない、単数です。トップに立つ人間は孤高の存在ですから、孤高の存在たる1を名付けました。みぞれに名付けようとして余った名前だったから流用したってのもありますが。

トランプの元ネタは、ジョーカー。ジョーカー=ババ=馬場というわけです。ラスボスに相応しい名前になったんじゃないでしょうか。ちょっとベタですけど。

 

加えて、みぞれの信念を惑わす悪役ポジションにもなってもらいました。伊緒菜に負けて、はい退場、では寂しい気がしたので、みぞれの心に巣くう存在にしました。

みぞれとしては、「大好きな親友のようになりたい」と願い、さらに「大好きな友達の真似をすることで強くなる」といった展開を経た後に出てくる「人真似は良くない」と告げる人物だったので、かなり心を惑わしてもらえたと思います。中ボスの役割を立派に果たしてくれましたね。

肇さんの言葉をきっかけに、みぞれは自分や自分の欲を見つめ直し、自分が本当に得たいものに気付くことができました。

 

その他の登場人物

石破光子

萌葱高校QK部の顧問。名前の由来は四つ子素数の"親"の148と325。

QK大会の運営である河野桃子とは従姉妹関係で、QKと馴染みがある人物だったりしました。

「顧問の先生が大会関係者の親戚」という設定は、ポッと出したわけではなく、当初からありました。2年目に「顧問の先生(または大会関係者)の孫が入部してくる」という展開にすることを最初から決めていたので、その流れにしやすくするためにこのような人間関係を設定していました。

 

古積奈々

その「孫」であり、本作のラストでQK部の新入部員となった子。石破教諭の孫にするか、大会理事の子にするかはしばらく保留していましたが、文化祭編を書く頃になって「先生の孫にした方が話が楽そう」と思って孫にしました。

名前の由来は、素数523と7。523は、素数大富豪が生まれた5月23日に関連する素数でもあります。素数大富豪界隈では「ゴツ美」と呼ばれて親しまれている数です。

当初は2年目も書こうと思っていたので、この子のエピソードも書く予定ではありましたが、残念ながら……。

みぞれとつーちゃんが1年かけてラブラブになったところにこの子が入ってきて、つーちゃんに惚れ込み、ハイテンション三角ラブコメになる予定でした。私にそんなもの書けただろうか……?

 

橘/遠野

慧ちゃんのクラスメイト。フルネームはそれぞれ、橘由乃(よしの)と、遠野咲(さく)。作中で明かしたっけ……? 設定自体は最初からあったのでどこかで書いていてもおかしくないですが、書いたような書かなかったような。

「ツッコミの橘、ボケの遠野」という関係性くらいしか決めずに書き始めましたが、慧ちゃん視点のストーリーでは何度も重要な役回りを担ってくれました。

ちなみにこの三人は、出席番号が隣同士で、それが仲良くなるきっかけだったという設定です。作中では明言してませんが、慧ちゃんと橘の席が前後なのは、席順が出席番号順だからです。橘が一番後ろの席なので、次の遠野は一番前の席になっていたのでした。作中のどこかのタイミングで席替えが発生していて、この位置関係は崩れているはずですが……作劇上の都合で、慧ちゃんと橘はずっと席が近かったですね。

 

遠野は登場するたびに知能が下がっていきました。書いてて楽しかったです。伊緒菜の次ぐらいに好きなキャラだったかもしれません。遠野が貰ったプリントをその日に失くすシーンが好きです。

橘は登場するたびに口が悪くなっていきました。ツッコミ役をさせていただけなのですが、私がツッコミキャラを書くとただただ口が悪くなるのだとわかりました。反省点です。

この二人が登場するシーンでは、意図的に雑談を多く描きました。ただの雑談はプロの作家でも書くのが難しいと言われ、その練習を兼ねていました。うまく女子高生の雑談が書けていたでしょうか?

 

伊藤雪子/工藤鈴

家庭科部の部長と副部長。大雑把でラフな部長と、真面目な委員長タイプの副部長というコンビにしました。鉄板ですね。そういえばQK部の部長は伊緒菜ですが、副部長は誰なんでしょう……?

名前の由来は、110と910。ともに、後ろに「くん(9)」「さん(3)」を付けて素数になる数として知られています。伊藤さんと工藤さんは素数コンビなのです。

太田日向/大月瑠奈

ライバル校のひとつ烏羽高校の部長と副部長。萌葱高校QK部のよきライバルとして活躍してくれました。

この二人はコンビなので、名前もそれぞれ「太陽」「月」に由来するものにしました。双子素数とかから取ってきてもよかったかもしれません。

全国大会編で退場しますが、最終章ではパソコン画面越しに再登場。18歳以上が参加できる深夜大会にて大活躍しているところを、みぞれ達に観戦されました。

「全国大会で戦った相手が、もっと大きな大会に出ているのを目撃する」という展開は最初から考えていて、日向と瑠奈は最初からそのために登場させたキャラです。これをやらせるために、地区予選編のラストで「ここ以外にも大会はたくさんある」と発言させたのです。伏線回収まで長かった。

相馬梨乃

読者によっては「誰だっけこれ?」となるキャラかもしれません。地区予選編で散った鳥の子高校ボドゲ部の子です。個人的なお気に入りキャラ。天真爛漫な部長に持たされた「安産祈願」のお守りを持って、QK大会に臨みました。何気に遠海美沙を倒した強キャラでもあります。ビギナーズラックではありましたが。

若山美音

この子も「誰これ?」枠かも。地区予選でみぞれと同じ三位に輝いたボドゲ部の子です。不敵な雰囲気を醸させましたが、醸すだけ醸してあまり活躍せず退場しちゃいました。もっと活躍させたかった。反省点です。

一浦小海三/内田鈴鹿

個人的お気に入りカップリング。やっぱり「誰これ?」枠かも。全国大会編で、群馬から参戦した先輩後輩カップルです。後輩の鈴鹿は無意識にセンシティブなことを言いまくり、先輩の小海三は「そういう意味じゃない」と分かりつつもあたふたする、という天丼ギャグをやらせました。書いてて楽しかったです。全国大会編のラストでは、鈴鹿がマジで無意識にそういうことを言いまくっていることが明かされました。こういうキャラの思考が描かれることって少ないと思うので、貴重なシーンだったと思います。

サブキャラですが何気に元ネタとなったキャラがいて、鈴鹿は『ゆるゆり』の吉川ちなつ、小海三は同じく『ゆるゆり』の船見結衣です。

嘉数祈里

「誰これ?」枠五人目かも。沖縄出身の女の子。初めての一人旅にわくわくして、ホテルのベッドに裸で倒れこんだりしています。可愛い。ここだけでもいいからアニメ化して欲しい。

府川鞠

いわゆるデータキャラ。データキャラらしく、データにない戦法を採られて負けるコテコテの展開を作ってくれました。何気にみぞれの成長に一役買った重要人物の一人。データキャラってよく「噛ませ」で出てきますけど、「主人公がそれまでとは異なる戦い方を強いられる=強制的に成長させられる」という、作者にとって非常に都合の良いキャラであることがわかりました。勉強になった。

森栞子/寿崎二葉/Amy North

北海道からの刺客。「巨大素数をいくつも覚えている」という戦術で萌葱高校を苦しめました。

素数大富豪は、原理的には、トランプ11枚で作れる素数をすべて覚えてしまえば勝てるゲームです。『QK部』の構想を練っていた頃、素数大富豪界隈の人々もそのことはわかっていました。しかし同時に、人間にそんなものは覚えられないだろうとも思っていました。そのため、伊緒菜も、遠海姉妹も、他校のQK部の人達も、あまり巨大素数を覚えていません。

が、『QK部』を書き始めて1~2年経った頃、7枚出し、8枚出しの素数を平気で覚えてる人達が現れ始めました。その全員が北海道出身だったため、北海道からの参加者達をこのような設定にしました。

北海道出身者にそんな人達が現れたのは偶然ではなく、札幌で継続的に開催された「素数大富豪で遊ぶ会」の中で切磋琢磨しあった結果だそうです。

もしも全国の高校に本当に「QK部」があったら、きっと同じように巨大素数を覚えた高校生だらけになるのでしょうね。

ちなみに、Amy Northは片言の日本語を話し、語尾が「デス」などとなっていましたが、あれは演技という設定だったりします。全国大会編のラストでちょこっと仄めかされています。

佐藤龍火

髪を真っ赤に染めた、ヤクザの娘みたいな見た目の関西弁少女。全国大会なんだからひとりぐらい方言キャラを出そうと思って出しました。まぁ、私が神奈川出身で、本場の関西弁を知らないので、「フィクション関西弁」を喋っていますが……。

個人的お気に入りキャラのひとりです。コメディキャラとして活躍してもらいました。

この子にも元ネタがいて、『アイドルマスター』の村上巴です。村上巴はコテコテの広島弁で、ヤクザの一人娘のような言動が目立つキャラです。実際は土建屋の娘で、ヤクザとは無関係なところなどを、そのまま龍火の設定に使いました。どうして村上巴を元ネタに選んだのかは覚えていませんが、遠海姉妹が『アイマス』の双海姉妹に酷似していると指摘を受けてから、アイマスキャラを色々調べた記憶があるので、その流れで気に入ったキャラの一人だったのだと思います。

ちなみに、大阪の高校なのに「茨黄高校」というややこしい名前になっていますが、大阪府には実際に「茨木市」が存在し、「大阪府立茨木高校」が実在します。さらに、そこには「茨木高校素数大富豪同好会」が存在します!

執筆当時は活動していましたが、現在も活動しているのかな? いま調べてみましたがよくわかりませんでした。

東雲楓佳/的場あす香

全国大会中唯一の、数学部からの参戦者。言うまでもなく、慧ちゃんのストーリーに組み込むために登場させました。

部長の東雲楓佳は僕っ子ですが、別に「女が数学やってると変に見られるから男っぽく振る舞っている」といった理由はなく、読者が覚えやすいようにわかりやすいキャラ付けをした結果です。

後々、数学部のメンバーが慧ちゃんに会いに来る展開にするつもりだったので、そのときまで読者が覚えていられるよう、わかりやすく僕っ子にしました。

……が、いざそのシーンを書く段階になってから、「よく考えたら受験勉強の真っ只中に広島から東京まで来れるのか?」という疑問が発生。修学旅行で東京に来たついでに慧ちゃんに会うつもりだったのですが、「修学旅行は高2の行事では?」と思い直し、急遽変更しました。

キャラの濃い部長ではなく、二年生の的場あす香が慧ちゃんに会いに来ることになったのはそんな理由でした。元々楓佳が言う予定だった台詞を、あす香が「部長の受け売りだけど」と話すことになってしまいました。

まぁ、あす香はあす香で、既知の完全数を全部覚えようとするなど、キャラは立ってたのでよかったでしょう。

余談ですが、作中でも触れられている通り、数学好きだからと言って完全数を全部覚えている人は稀です。たいていの数学好きは、具体的な数には興味ありません。そういう意味では、かなり異質で尖ったキャラだったと思います。

 

小西那由他/成田凜

ザ・名脇役。のつもりで書いてましたが、どうでしょうか。地区予選や全国大会、そして最終章で出てきた大人向けの大会などで実況と解説を務めた二人組です。小西那由他が解説、成田凜が実況でした。

名前の元ネタは特にありませんが、「那由他」は10^60を表す数詞ですね。ちなみに小西(524)は合成数ですが、後ろに1,3,7,9,J,Kのどれを付けても合成数になる「六つ子合成数」です(いま調べた)。

特に凝ったキャラ設定にはしておらず、真面目で堅物な小西と、ラフで大雑把な成田の組み合わせにしています。鉄板ですね。家庭科部の部長と副部長もこの組み合わせでした。

二人とも数学科出身の社会人で、小西は証券会社社員、成田は保険会社社員です。これらは数学科出身者の定番の就職先だとか。大会の運営は本業ではなく、ただのボランティア(多少の謝礼が出る程度)で行っています。それも本人たちが希望したというよりは、いくつもの大会に出場するうちに、大会の運営者たちと仲良くなり、声をかけられて……と言った流れです。

私も数学イベントの運営に携わることがあるのですが、数学イベントでは、実際にこんな感じで誘われてスタッフになった人はたくさんいます。聞きかじったところだと、他の界隈のイベント(SFのイベントとか)でも似たようなことは多いようです。

この手の部活ものでは、メインとなるのは部員達、選手達です。なので、スタッフや大会の裏側に焦点が当たることはめったにありません。本作では小西と成田を通じて裏側にもスポットが当たることがあり、部活ものとして結構珍しかったんじゃないかと思います。そういう話が書けたのは、私自身が色んなイベントの運営に関わっているからでしょうね。

 

 

……以上で、登場人物で振り返るストーリーは終了です。もし「私の好きなあのキャラがいない!!」となっていたら申し訳ないです(言ってくれたら、そのキャラについても書きますよ!)。

 

反省点まとめ

登場人物を紹介しつつ、ストーリーを振り返ってきました。色んな反省点がありましたね。ちょっとまとめましょう。

  1. サブタイトルを数字と数式だけにした
  2. みぞれの名付けの由来を終盤まで引っ張った
  3. 素数大富豪の試合内容を事細かに描いた
  4. 伊緒菜の常勝を強調できなかった
  5. 慧とみぞれのキャラが被った
  6. 津々実のみぞれからの見え方が変化したことを印象的に描けなかった
  7. 描きたいストーリーに対し、それを描くのに必要な分量のイメージがつかめていなかった
  8. ツッコミキャラがただ口の悪いだけのキャラになった
  9. 不敵な雰囲気を出させたキャラをもっと活躍させたかった

番外.みぞれを巨乳にした

 

サブタイトルについては、ある意味本作の特徴のひとつとなったし、まぁいいのかなという気もします。試合内容を事細かに描いたのも、素数大富豪ガチ勢の方々には好評だったので、ターゲット層によってはありでしょう。

しかし残りは。うーむ。

2は、こういうネタは序盤に出して、ことあるごとに掘り返した方が良さそうだなと感じました。自分の名前と関連付けて悩むとか、いかにもみぞれがやりそうなことですし。

5は、二人のどちらかを、もう少し人付き合いできるキャラにすべきでした。人と深く関わり合いたくない慧ちゃんが、それゆえに、社交辞令的なやりとりは得意だったとしても、違和感はありません。表面的な付き合いだけの相手が多い中で、QK部メンバーや、遠野、橘とは深い付き合いになっていったら、それはそれでエモかったかもしれません。

7はただの経験不足ですね。何度か長編小説を書いてみれば、いずれつかめるようになるでしょう。

残りの4、6、8、9については、どうすればよいのかすらよくわかりません。単純にストーリーテリングやキャラクタ造形の引き出しが少なすぎるのが原因かもしれません。たくさん小説を読めばできるようになるかなぁ。

 

それから、全体を通しての反省点がひとつ。物語の構成そのものについて。

部活ものは、全国大会とかそれに類する大会をラストエピソードに持ってくるのが定番です。そこで優勝したり、主人公たちが何かしら成長したりしてお話を締めるわけです。

が、『QK部』はそうなっていません。なぜそうなってないかというと……

・全国大会は夏休みに行われるべきと思い込んでいた
・それはそれとして、体育祭や文化祭も書きたかった
・そして体育祭や文化祭は二学期に行われるものだと思っていた

という理由からです。元々2年間を描くつもりでいたので、2年目の全国大会をラストに持ってくればいいやと思っていた、というのもあります。

今思えば、12月13日の前後に全国大会が行われるとかでも良かった気はします。それでいて、全国から強豪が集う他のイベントを1~2学期に行えば、適宜盛り上げることもできたでしょう。

もっとも、高校の部活の全国大会が12月ってのは、受験とかの関係からちょっと考えにくいですが。

 

ま、多少の反省点はありつつも、これだけの長い話をきちんと書き切れたのはすごいことなんじゃないでしょうか。

どんなに長くても、書いていけばいつか完結するんですね。冒頭にも言いましたが、こんなに長い話を書いたのは初めてのことですから、いつか終わることがずっと信じられませんでした。終わるんだなぁ。

 

次回作

さて、『QK部』は無事終わりました。この記事を投稿したら、本当の本当に完結です。

悲しいですが、私はこれを終わらせねばなりません。そして私は、次へ進まねばなりません。

今のところ、次に何を書くかは全く決まっていません。いくつか候補はあるんですけどね。どれにするか決められずにいます。「えいやっ」と決めないとダメそうです。

どれを書くにしても、おそらく『QK部』ほど長くはならないでしょう。文庫本1冊分くらいの長さで収めたいと思います。

 

私はカクヨムに何本も短編小説を投稿しているのですが、その中のどれかを長編化するのが良いかなぁと思っています。短編の時点で評判の良いものを選べば、人気が出るかもしれませんからね。

 

一番人気は『異世界に行ったら背理法がなかった』です。

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私のTwitterフォロワーは数学系の方が多いですから、数学的に正しく長編化できればフォロワーにはめちゃくちゃ刺さるでしょうね。

既に構想自体はあるのですが、いかんせん私自身が直観主義にあまり詳しくないので自信がありません。勉強するかぁ。

 

数学と関係ない話もたくさん書いています。たとえばこれ。

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いわゆる「異能バトル物」です。好きなんですよね。こっちはまだ構想すら浮かんでません。でもアイディアは気に入っているので、このまま終わらせるのはもったいないなと感じています。

 

長編ではなく、連作短編にするのもありかなと思ってます。こちらの『労災探偵』とか。

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労災をテーマにしたミステリーです。公開済みのこの話は個人的に不満点があるので、そこをリメイクしたものを第1話とする新規連載を始めてもいいですね。

労災事例は厚生労働省のHPなどでいくらでも閲覧できるので、ミステリーのネタ自体はそこからいくらでも持ってこれるメリットもあります。

 

労働関係の話で言えば、最近書いたこれもあります。

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ひとつの駄菓子ができるまでを描いたお話です。5000字以内という字数制限で書いたのであっさりした内容になっていますが、実際の企業を考えればこんなもんじゃないことは想像に難くありません。それを全部、ヒューマンドラマを絡めつつ書いたら楽しいだろうなぁと思ってます。

 

連作短編かつ数学ネタを扱った小説は、以下のようなものがあります。

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はたらく細胞』にインスパイアされて書いた作品です。細胞の代わりに、数とか演算子とかが擬人化されて、数学の定理を証明します。

 

それから、連作短編かつ数学ネタかつヒューマンドラマとして、こんなものもあります。

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数学デーという、数学好きが集まる場所を舞台にした1話完結作品です。ネタ出しがめちゃくちゃ大変なのですが、これに力を入れるのもありですね。

 

あと、Twitterで「女子高生と男子高生が知り合う方法を30個考えるとシナリオ力の訓練になる」という話題を見かけて書いた話もあります。

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30通りの方法でJKとDKが知り合っていますが、この中で気にいったものがいくつかあるので、それを実際に書いてみたいですね。

 

『QK部』の続編、あるいはスピンオフなんてのも考えることはできますが……さすがにすぐにはやりません。

なお番外作品はすでに1作だけあります。

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これも連作短編にできるっちゃできますね。古積奈々ちゃん視点の話にしても面白そうです。

 

……と、アイディアはいっぱいあるのですが、いかんせんそれを形にするってのはなかなか難しいことでして、これらのうちどれかひとつでもできるかどうか、わかりません。できたらいいなぁ。

加えて言うと、私はいま色んな新人賞に立て続けに応募しているので、どうしてもカクヨムは後回しになってしまうというのもあります。『QK部』もそれで更新が滞ってましたし。

ちなみに、カクヨム経由で応募した作品もいくつかあって、たとえばこれはそのうちのひとつです。

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角川つばさ文庫大賞で1次選考だけ通過しました。面白いと思ったんだけどなぁ。

 

ちなみに現在、カクヨムで「素数大富豪」で検索すると、たった2件しかヒットしません。そしてどちらも完結済みです。

すなわち、いま素数大富豪小説はブルーオーシャン素数大富豪に興味のある方、ぜひ書いてみては?

 

終わりに

ああ、悲しいかな、『QK部』はこれにて完結です。全101話、番外編を含めると全110話の長編小説となりました。まさかこんなに長くなるとは思ってもいませんでした。

みぞれ達の物語、楽しんでいただけたでしょうか。もし楽しんでいただけなら、そして素数大富豪に興味を持ってもらえたなら、この上なく嬉しいです。

私にとっては、長編ヒューマンドラマという初めての挑戦をした作品でもあり、初めてキャラ設定を作りこんだ作品でもあり、初めて書籍化した作品でもあります。こんなにもキャラを作りこんで、こんなにも長く書くと、こんなにも愛着が湧くものなんですね。連載漫画家とか連載完結するたびにこんな感傷に浸ってるのでしょうか。それで仕事は回るのでしょうか。

 

初めて尽くしでうまく行かない部分もあった作品ですが、それでもこの『QK部』は私に新しい体験をさせてくれて、創作の幅を増やしてくれた作品です。書いてよかったと思える作品です。

みぞれ、伊緒菜、慧、津々実に、感謝を!

そして最後まで読んでくださった読者の皆様、どうもありがとうございました!